皆さん、バーに対して「イメージ」が強すぎるな、と思います。
映画なのかドラマなのか漫画なのか知りませんが。
グラス滑らせてシャーーっとかやんの?
「あちらのお客様からです」とかあり?
などなど、なんの見過ぎなんでしょうか?
そんな疑問に答えつつ、ここではバーでのマナー全般についてご案内致します。
そもそもマナーってあるの? バーのマナー??
このように思う方もいらっしゃると思います。
マナーよりもエチケットよりのお話にあたるのかも知れませんが、バーにおける配慮全般をマナーと言われますので、ここでは「マナー」とした上でお話しさせていただきます。
そのバーでのマナーはもとより、あるいはもっと厳格に「ルール」として一定の行動が制限されているかはそのお店やマスターによります。
ここでは大丈夫だったのにあそこでは注意された。
あそこではダメだったけどここでは快く対応してくれた。
そんなことも全然あり得ます。
今まで「バーテンダーはこうあるべき」的なことがつづってある本をたくさん読んできましたが、あくまでそのマスター、バーテンダーの意見であって、きっと正解はないです。
ここでも、私の見解で話をします。
私が今まで行ってきたバーでの出来事や、他のバーテンダーと話してきたこと、自分のキャリアをもとに話をします。
基本的には他のお客様に不快感を与える、迷惑、不愉快になり得る行為に関してがNG。
お店にとって直接迷惑な行為もお断り。
そうならないよう配慮、行動をしていただくことがバーにおけるマナーかと思います。
それではよくあるマナー違反行為、そして皆さんの疑問について見ていきましょう。
自分のバーテンダー歴は12~3年ほどです。
今まで足を運んだバーは都内の有名なバーのほとんど。他ホテルバー、都内・地方問わずオーセンティックバーからカジュアルバーまで数知れず。
カクテルやボトルの写真を撮る。店内の写真を撮る。
カクテルやボトルの写真を撮る行為に関しては無断であっても“ウチは”何も言いません。
照明が暗めのバーでは他のお客様のご迷惑になりますので、フラッシュをたかれた場合にはお声かけさせていただくことがございます。
しかしフラッシュをたいてしまった多くのお客様が意図的ではありません。なので場合にもよります。
大体のお客様が「あ!すみません…」となりますので、そんな時は優しく笑顔で対応させていただきます。
あまりにカシャカシャとシャッター音が頻繁に続く際にも、お声かけさせてもらいます。
SNSのこの時代、写真を撮りたくなるお気持ちはわかります。
飲んだボトルの記録・記念に写真を撮る方もいらっしゃいます。
他所のバーでもボトルやカクテルの写真を一枚二枚撮ったところで何も言われないところが多いでしょうが、一言「写真撮っていいですか?」などと言っていただけると好感が持てます。
そのように一言断りをいただけると、こちらもより綺麗に撮れるようご案内出来ます。
なお自分の場合ですが、店内の写真を撮る行為・他者を巻き込む撮影に関してNGです。
フラッシュはもってのほかです。
ボトルを勝手に触る。ボトルを勝手に開けて鼻を近づけて匂いを嗅ごうとする。
多くのバーでは、その時飲んでいるボトルが正面に置かれます。
カクテルの場合はそれぞれの材料が全て置かれることは少ないですが、ウイスキーやブランデーなんか飲んでると大体目の前に置いてくれますね。
スペースの都合上などでバックバー(カウンター越しに酒を並べてある棚)のように、売り物のボトルをカウンターに並べてあるバーもあります。
お酒のボトルというのはラベルやボトルの形状に凝っていて、カッコよかったり可愛かったり、オシャレなものも多いです。気になるのは大いに理解できます。
飲食物である商品ですのでそれらを勝手に触る行為はあまりマナーのいい行為ではありませんが、手に取って見るまでは自分はセーフにしています。
ここまでは何も言いません。
ただ写真と同じで一言「ボトル見ても良いですか?」と断っていただけると好感が持てます。
しかし!中にはそのまま勝手にボトルを開けて匂いを嗅ごうとするヤツがいます!
我々バーテンダーからすると、もうとてもとてもとても信じられない行為です!
お酒の瓶のフタはスクリューキャップかコルク栓が主。
スクリューキャップの場合破損の心配は大丈夫でしょうが、コルクの場合折れてしまうことがあります。
折れてしまったらどうしますか?
店頭に並んでいる商品を破壊してしまったのと同じです。
そして鼻をボトルの先端につけてしまう可能性も大いにあります。あり得ません。
売り物に出来ません。
開けようとする方には速攻でお声かけします。
これはおそらくどこのバーもそうだと思います。
逆に何も言わないバーは品質管理を疑います。
ただ…実は知らないだけであって、悪気がないお客様もいらっしゃるのです。
どうか以後お気をつけください。
「イメージで作ってください」ってありですか?
そのバーの雰囲気やその店のバーテンダーの接客によると思いますが、これを聞かれることは結構あります。
個人的には迷惑でもなんでもないです。
マナー違反にはならないと思います。
しかも、このオーダーをされる方は「私のイメージでお酒をつくってください」ではなく、ほぼ例外なく、イメージで作ってもらえるのか、まず確認をしてくださいます。
自分は10年以上未だ「私のイメージで一杯」という一撃オーダーを受けたことはありません。
「自分をイメージしたカクテルを一杯」と注文されたら「いきなりなんだこいつ」とは思いますがオーダーとしては受け入れます。
結局いろいろ聞き出すとは思いますが…。
このオーダーに関して、バーテンダーを困らせるとかいう人も居ますがキャリアのあるバーテンダーであれば困ることはないでしょう。
ただの「おまかせ」と一緒ですから。
対応の仕方を知っています。
しかしバーテンダーはそれぞれ態度が違います。
笑顔でウィットに富んだトークで対応をしてくれる方もいれば「いや、そういうのやってないです」と冷たい感じの方もいるでしょう。
応えてくれそうなバーテンダーであれば言ってみても良いんじゃないでしょうか。
バーテンダーに酒を飲んでもらっても良いの?
あまり夜に慣れてない方にとって店員と酒を飲むということが不自然に感じられるかと思いますが、逆に水商売の人間や夜遊びに慣れている方にとっては自然の感覚です。
お声かけ頂いた際、自分は有難く頂戴します。
もちろんバーの方針によっては「お気持ちだけありがたく頂戴いたします」と言ってお酒を飲まないバーもあります。
ただ、自分は相当数のバーで飲んでいただくよう声を掛けさせてもらってますが、ほぼほぼのお店がご一緒してくださいます。
そのお店やバーテンダーが飲める飲めないかはさておき、一緒に飲もうと言って頂いたそのお気持ち、心遣いが嬉しいのは間違いないと思います。
最近の檸檬堂のCMでも、阿部寛さんがお客さんに「私からも一杯どうぞ」と言われています。
ただ、これはあくまで飲んでもらう「よかったらどうぞ」と言うのがアリなだけで、マナーでも強制でもないです。
奢らなくて良いんです。
スナックだろうがキャバクラだろうがそうです。
スタッフドリンク、キャストドリンクが「強制」な店はぼったくりバーくらいでしょう。
まぁスナック・キャバクラではドリンク代くらい込みで遊んで欲しいですが…。
気持ちの問題ですから、話しをしていて楽しい、気持ちが良いと思ったら声を掛けてみて良いんじゃないでしょうか。
グラスをシャーーっとかやんの?
絶対やりません。
200%ありえません。
自分はまだ勝手にカウンター上でグラスを滑らせようとする人に会ったことがありませんが、やりだす人もどこかにいそうですね。こわいこわい…。
倒れてグラスの破損に繋がりますので絶対にやめましょう。
真面目に返答するならば、多分やろうと思っても出来ないんじゃないかと思います。
倒れるのもそうですし、中の液体こぼれるでしょうし、カウンターとグラスの摩擦を対策しないと滑らないです。
そしてコレを言う人に疑問なんですが、コレってなにから始まったイメージ行為なんですか?
由来をご存じの方がいらっしゃいましたら教えてください。
「あちらのお客様からです」とかあるの?やって良いの?
「あちらのお客様からですってやって良いの?」
この聞き方をしてくる人は自分が男で対象が女性です。
ナンパがしたいならそういうお店に行ってください。
「あちらのお客様からです」というような、何も接点のない人から人へいきなり提供することはまずありません。
それ以前にいきなり「あちらのお客様へ僕から」なんて言う人に未だ会ったことがありません。
仮に挑戦してみたい方が今これを読んでいるのなら、席が離れているにも関わらずお酒を出すよう促して女性をナンパしようとする行為はダサいですし、そのようなスマートじゃない行動は断られます。
勘違いでイタイのでやめましょう。
たまにあわよくば…と思っている男性がいますが激しくザンネンです。
どっか行ってください。
しかし、バーでお酒をおごりおごられというのはよくあります。
ただそれは、ナンパ目的に男性が女性におごっているわけではありません。
バーでは皆さん性別も年齢も職業もバラバラです。
一杯どうぞ、どころか「彼(彼女)の会計一緒で良いよ」と言って会計を全部支払う方もいます。
極端な例だと、その時居合わせたカウンターの方の会計を全て払って行く方なんかも数人お会いしたことがあります。
若い男の子に年上の男性が一杯ご馳走する光景なんかはよく目にしますね。
「そのお酒が好きならコレ飲んでみなよ」と会話が盛り上がった流れとかで。こういった光景は非常に良き酒場だなと思います。
基本的には相手が同性であれ異性であれ、会話をしている流れで「よかったらどうぞ」などサラッと言える素敵な紳士淑女の皆様ではあります。
お互い楽しんでいるのならば大歓迎です。
それまでの繋がりで場が弾んでいるのならば、男性から女性だろうがバーテンダーもそれを受け付けます。
スマートな気遣いが出来る男性の場合女性には不快に思われていないんですが、悲しくなるくらいコミュニケーションにセンスの無い男が結構いるんですよね。
見てて痛々しい。そういう男性ってやっぱりモテないんですけど。
もしも自分から話しかけて女性が相手になってくれたんなら、酒の一杯や二杯、奢りましょうや。
「大人の社交場」ですから、そのくらいのカッコウくらいつけて欲しいものです。
そのくらいは”粋”に飲んでほしい。
そんなことにも気づけない男性は自ら女性に話掛けないでください。
変な女性に絡まれるということも十分あり得ますので、お気を付けくださいませ。
他のお客さんに声を掛ける行為
一つ前に類似していますが、やはりこの辺が一番直接他のお客さんを巻き込む行為なので迷惑な人が多いです。
知らない隣の人と賑やかになるのがいけないわけではありません。
ただ独りよがりにそのような行為はバーでは相応しくないので、そういう飲み方がしたい方はそういうお店に行ってください。
来店者同士の出会いを推奨している店ではなく一般的なバーの場合は「他のお客さんに声を掛ける行為」が良しとされるかどうかは、貴方によります。
隣のお客さんに独りよがりに自分の話をし続け、周りに気を遣えない方もいます。
そういう方に他のお客さんが絡まれるのは非常に困ります。非常に迷惑です。
当然、他のお客さんとバーテンダーとの会話、他のお客さん同士の会話に勝手に割って入ることもマナー違反です。
くだを巻くのであれば相手はバーテンダーにしてください。
他のお客さんに迷惑にならない程度に「相槌を打ってもらえる」と思います。
貴方がどう思われるかはわかりませんが。
貴方が独りよがりに自分の話をし続けず周りに気を遣えるような方であれば、バーテンダーにはそれがわかります。
他のお客さんとの会話のきっかけはバーテンダーが作ってくれることでしょう。
きっとお客さん同士が愉快なコミュニティになるはず。
常連さん同士が仲良くなること、知り合って他のお店に飲みに行くこと、異性が付き合うこと、結婚すること、様々あります。様々見てきました。
バーは「大人の社交場」です。
自然に会話が生まれる事、出会いが生まれる事は「大人の社交場」において良いことだと思います。
お互いが楽しい思いが出来たら素敵なことです。
お互いが楽しい思いが出来たら、です。
残念ながら、お互いではない場合が多々あります。
率先して隣の人に声を掛けたい方はそういう店に行くべきでしょう。
一杯で帰るのは失礼?
全然そんなことありません。自分は大歓迎です。
味や人間性、お店の雰囲気が合わなかったら居たくないでしょうし、無理して居てほしくもありません。もう一杯飲む時間もお金も無駄ですよ。
「一杯で帰っちゃダメです」と謳っているバーにも出会ったことがありませんが、どうやら一杯で帰られることを快く思わないバーテンダーはいるようです。
逆にお客さん側で気を遣ってしまう方もいらっしゃるようですが、ここはお客さんの自由です。
最初に書いた通り誰かに迷惑を掛ける行為がマナーに反すると考えてますので、これって誰にも迷惑掛かってないですよね。
ここはバーテンダーとしてぶっちゃけですが…
ただ、その一杯で長居されるのだけはひじょーーに嫌です。
氷も溶けてグラスが空にもかかわらず、一杯で延々二時間話しかけられ続けるのは本当に嫌ですね。
自分のバーテンダー史上最長がショートカクテル一杯で四時間以上の人。
二人会ったことがあります。
一杯のオーダーで四時間延々としゃべり続けてました。すごいですよ。
もう、来なくて良いです。
それでも店に来てくれるのが嬉しいと言うバーテンダーが居るかもしれませんが、自分は無理ですね。
飲み逃げをする
論外。警察へGoです。
最後に
いろいろと書きましたが、どうしてもバーテンダー目線での解説になってしまい、不安・不快な思いをしてしまった方もいらっしゃるかもしれません。
悲しい思いをさせてしまいましたら申し訳ございません。
と、一応謝罪をしておりますが、マナーの悪いお客様がいらっしゃるのは事実です。
「いろいろうるせーなー」と思った方・上記のような思いをした方はバーには足を運ばない方が良いです。
少なくとも自分の店には要りません。
自分は他のお客様に迷惑を掛けるヤツは容赦なく要らないと思っています。
ただ、そんな自分ですら7年ほど今のお店をやっていて、本気で帰ってくれと促したのは1人だけです。
バーというのは客を選びます。
飲み手を教育するのもバー、などと言われたりもします。
なのでお客さん側も選べば良いんです。
感じが悪い・つまらない、そう感じたのなら行かなければ良い。ただそれだけです。
どうかお客様とバーが、素敵な関係を築けますことを…
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